説教 20220130マタイによる福音書10章32~11章1節

「人生を溺愛してはならない」  ― 人前でこそ自分なんだ ―

 今日は子どもたちがいますので子どもたちにわかるように話しましょう。

アレルギーという病気を知っていますか。食べたり触ったり吸ったりすると身体に悪い影響を起こしてしまうものがあります。 ある人は卵で肌がチクチクしたり、他の人は蕎麦で息ができなくなってしまう人もいます。

 小学生のヒロシ君は牛乳アレルギーで牛乳をとても怖がってました。牛乳を飲むと身体がかゆくなってしまうのです。ところがある日、親戚のおばさんがやってきて美味しいレストランに連れて行ってくれると言うのです。レストランに着くとおばさんはグラタンをヒロシ君のために注文しました。ヒロシ君は「アッ」と思いました。以前グラタンを食べたら、そこに入っている牛乳で身体が痒くなったことを思い出したからです。「どうしよう」と思ましたがわがままな子とか弱い子と思われそうで「食べられません」といえませんでした。とうとうグラタンが来ました。一口スプーンで食べたら、思わず吐きそうになりました。おばさんはそれを見てヒロシ君に訊ね牛乳アレルギーのことを解ってくれました。「ヒロシ君、自分の嫌いなものはちゃんと言っていいのよ」。ヒロシ君は自分のアレルギーのこと、牛乳がだめなことをちゃんと言わないと大変なことになると思いました。

 ある日、いつものとおり学校に行くと、靴箱室の奥の暗いところに何人かの人影を見ました。どうも何人かの生徒たちが一人の生徒を取り囲んで話しているようでした。たまたま大きな声が「今日の分持ってきたか」というのが聞こえました。誰かが誰かを怒鳴っていました。「いじめだ!」とヒロシ君は気付きました。その時、そっちの黒い影から誰かがやってきて言いました。「見てたのか、来いよ」。ヒロシ君はガタガタ震えながらその暗い集まりのところへ連れて行かれこう言われました。「誰にも言うなよ。言ったら、お前にも持ってきてもらうからな」。

 ヒロシ君はとても怖かった。怖かったのですがちょっと考えました。「アレ、いじめが大きくなっていく!広がっていっちゃう!」と。「もしも僕がわかった、誰にも言わない」なんていうと、僕もいじめを広めて行っちゃう。ヒロシ君は言うことを聞いたら自分もいじめに負けちゃいそうでとっても嫌な気分になったのでした。そこで言いました。「いじめは嫌いだ!」と。すると何人かがこっちに来てなにか大声をかけました。体を揺すられ、壁に押し付けられ、ポカリと叩かれたようでした。「文句アンかよ」などと言ってきましたが、ヒロシ君は「やめて!ダメだから!」と言うことしかできずに言い通しました。とっても怖かったのですが「いじめはダメ」と言ったことで、嘘をつかなくてよかった気持ちになれました。もし「わかった」と言って逃げかえっていたら、きっと何かとても汚い腐ったゴミや悪い毒薬を持たされて帰されたような気持になっていたと思います。

 いけないことは「いけない」と、嫌いなことは「嫌い」と、思ってるだけじゃなくて、みんなの前で言う。そうすると強くなれます。イエスさんはそう言ってるのです。

 「だれでも人々の前で自分をわたしの仲間であると言い表す者は、わたしも天の父の前で、その人をわたしの仲間であると言い表す」。人々の前で自分のことを言うこと!

 「わたしが来たのは地上に平和をもたらすためだ、と思ってはならない。平和ではなく、剣をもたらすために来たのだ。わたしは敵対させるために来たからである」。もし誰かが悪いことをしているなら、こう言おう「わたしはあなたと友達にはなれない」と。

 「自分の命を得ようとする者は、それを失い、わたしのために命を失う者は、かえってそれを得るのである」。「黙ってろ」と言われて「わかった」と答えて帰ったら殴られることはないけど、腐ったゴミや毒薬をカバンに入れて帰ることになっちゃう。

 もし皆が「お前そんなこと言うのか」と怒ったり怒鳴ったりしても、怖がらなくていいんです。

 「正しい者を正しい者として受け入れる人は、正しい者と同じ報いを受ける」。怖くなったとき解って助けてくれる人は絶対にいるよ。

田原吉胡教会(田原吉胡伝道所)

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